wondervogelのブログ

不思議な渡り鳥こと、ワンダーフォーゲルのブログでございます。主にコーヒーなど、お茶にまつわることを綴っていきます。料理もそのうち書けると良いな~。

vol.23豆屋のおっちゃん

こんにちは。

 

今回からは少し視点を変えてコーヒーそのものではなく、それにまつわる「人」にスポットを当てて書いていきたいと思います。

 

というわけでその第1回目、「さかい珈琲」のさかいさんでございます。

 

さて、さかいさんといえば「知る人ぞ知る」というのがチラホラと聞こえてくる評判です。HPを見れば分かるとおり企業で39年に渡ってスペシャルティに携わってきた方です。コーヒーの会社といえばuccなどが認知度は高いですが、その缶コーヒーの原料となる工業用コーヒーで大きなシェアを占めるunicafeという名前は一般的には知られておりません。この企業こそは、日本においてコーヒーが身近な飲み物であるというイメージの支えとして、原料となる「焙煎したコーヒー豆」を提供し続けてきたという意味で立役者と言えるでしょう。そして、さかいさんはどうやらそこでスペシャルティ担当として働いていたようです。

 

さて、スペシャルティという概念は、コーヒーにおける様々な風味をより分かりやすく楽しむための一つの「物差し」であり「表現方法」です。面白いのは、それまでスペシャルティだと認定されていなかった、ある産地のものが、ある日を境にスペシャルティとして「格上げ」されることもあり、世界にはまだまだ沢山の未発見のウマいものがあるのだなとワクワクさせてくれるところです。この点、厳格で絶対的な指標というより、ある部分人間の舌が感じる未来の可能性という部分も包括したものであり、とても柔軟な考え方の部分でもあります。とはいえ、物を価値づける指標でもあるので、もちろんそこに従事する人々には相応に洗練された微に入り細を穿つ感覚や判断力が求めれられるわけですが…。とまぁこうしたある種マニアックな部分が、風味や香味を大事にする日本のお茶文化に非常にマッチしたもので、日本で広まるきっかけになったというのはよく聞くストーリーです。

そして、この価値観はSCAA(アメリカのスペシャルティコーヒー協会)で提示されたものですが、wikipediaを見るとSCAAが設立されたのは1970年代であり、これとほぼ同時期にさかいさんのキャリアがスタートしたことになります。このスペシャルティという概念を基に、さかいさんは世界各国の豆をカッピングして、産地の生産者やエクスポーター(輸出業者)と交渉し、日本にもたらした役割を果たしてきたことになるわけで、もうほぼスペシャルティ≒さかいさんなんじゃないかというくらいには一体化してます。

聞くところによると、コーヒー御三家のひとつとしても挙げられる「カフェバッハ」の田口さんに、「you、コーヒーやっちゃいなyo!!」といって火を付けたのもさかいさんだそうで、さもありなんといったところです。

とまぁこんなわけなので会社を退いた後も「老兵は死なず」よろしく、uccのお偉いさんやら諸国のエクスポーターさんが挨拶に来たりしておるようですが、最近では新宿はnewomanで開催された「minedrip」なるイベントに、イカした若い衆の兄ちゃん達に混じって、突如さかいさんが名を連ねていたのを見た瞬間、僕はブフォッと鼻水が飛び出ました。だってですよ?先ず見た目も年齢も飛びぬけてるし、なんだかオサレでキラキラした名前の中、突如「さかい珈琲」なんてたくましい名前が目に飛び込むわけですよ、もうね、超目立つわけです。さて、そんなわけで実際のその道の若い衆たちの中でも知らない人ともなると、誰やこのおっちゃん?とか思ってよくよく話を聞いてみると、ザワザワ…となってたとか。「老兵は死なず」どころか「虎や…虎がおる…」の有様です。

 

さて、このさかいさんには娘さんがおりまして、いつのころからかお店に立ったり、サービスしてくれるコーヒーを淹れてくれたりしていたわけですが、どうやら修行中だったようで。

なんとこの方もカッピングの技術では第3位の実力の持ち主でして、方々でコーヒーを淹れたりドリップを教えたりと業界に新しい風を吹き込んでいるようです。先日もコーヒー豆を買いに行った折、師弟のやりとりがなされているのを見るに、まさに親子鷹みたいな関係が素晴らしいですね。

 

僕がさかいさんのコーヒー豆は広くいろんな方に飲んで欲しいなと思うのはいくつか理由があります。

1つは、いわゆる堀口系に代表される素材の風味を最大限に引き出したローストをしていること。ちなみに現在のサードウェーブは、それをより先鋭化させたもの、というのが僕のイメージです。

 

2つ目はシナモンローストからフレンチローストまで何を飲んでもウマいこと。ウマいと単純にいうのもあれなんですが、ロースター屋さんは得意な炒りのゾーンがあってそこに偏る「らしい」、というのが聞いた話ではありますが、さかいさんはほぼ全てのゾーンを綺麗にカバーしておりクオリティにムラがない、というのが評判の一部にもなっているようです。ひょっとしたら企業にいる間の膨大な焙煎のプロファイルの蓄積が活かされているのかな、なんて想像しますが、そこは分かりません。

 

3つ目は、何といってもさかいさんの雰囲気がたまらんのです。幾年も時と経験と技術を経てきた姿、それとは対照的に気さくな人柄、ふと見せるプロフェッショナルな鋭い眼差し、しかも「知られざる伝説の人」なんて、もう絶対にカッコいいに決まっているじゃないですか!ミーハーな僕なんて、たまたま履いてる靴が同じだっただけでもニヤニヤしちゃいますよ。ほらソコ、気持ち悪いとか言わない。

というのは冗談にしても、遠い異国で日々農作業に従事する人々を見知っていて、さらに自分のこれまで培った技術で日々豆を黙々と焙煎する姿は、見ていてカッコいいわけです。まさにイコンたるにふさわしい所作ではありませんか。それに加えて気さくに僕のような下々にもお話をしていただけるわけで、これでファンにならない方がどうかしてるってもんです。

 

とまぁ、こんなに素晴らしいからこそすっかり広まったとはいえ、器の小さい僕はそりゃーこんだけ安くてウマいとこそう簡単に人に教えませんって!とかつい思っちゃうんですが、それも何ともケチくさい話なんで、こうして小さな世界の片隅でその豊かさをささやかに謳っておるわけです。まぁ、僕の小さな世界とは関係なく、さかいさんご自身が確信されている通りに「ウマけりゃ口コミで広がるさ」という一点に尽きると思います。