vol.80 香りの音
どーもこんにちは。
書きたいネタはあったけれどウダウダやってるうちにすっかり春眠暁を覚えず。
今日は本の紹介です。
『調香師の手帖(ノート)』 中村祥二 著 朝日文庫
この本は香水を作る「調香師」の人が書いた本です。
コーヒーにも香りがあり、「フレーバーホイール」などで香りの種類を分かりやすくイケてる感じの表にしてたりするんですが、香水の世界ではオシャンな感じで「ノート」という音楽用語を元にした「香調」というものがあるそうです。
「シトラス・ノート」、「スパイシー・ノート」、「アニマル・ノート」、「フローラル・ノート」などなど、いろんな「香調」があるそうで、コーヒーでも似たキーワードがいくつかあります。
さらに作中では「香階」なるものも出てきます。
”十九世紀後半のイギリスの香料研究者として有名なS・ピースが考案した香階がある。彼は一八五五年、自分の経験と研究から、四十六種の天然香料を、自然音階にならって音階のように並べ、著書『香りと芸術』に発表した。”と書かれています。
著者の中村さんが、一オクターブ違う香料を、”どのような割合で混ぜ合わせてもよく調和”したり、「和音」の組み合わせでも”香気の調和がとれている”と書かれているあたり、香階はただの雰囲気オシャンではないようです。
あまりのエクセレント&エレガントなアイデアに思わず、「オシャンってこういうことやぞ」と言われている気がします。
さて、この本ではいくつも興味深い話が出てくるのですが、個人的に読んでいて一番グッときたのは、とある「高名なパフューマ―」が”ある種の合成ムスク、ベンゾピラン系の合成ムスクのにおいを、特異的に感じなかった”、というエピソードです。
本によると”ムスクといえば、香料の専門家にとっては欠かせないにおい”だそうで、そのにおいを感じることができないにも関わらず、その方の創る香水には入っていたようです。しかも”常に、高級ラインの売り上げの上位にランクされていた”と書かれています。
さらに、著者である中村さんはこう書き記しています。
”私にはいまだにその謎が解けない。嗅覚だけにとどまらない、何か特別の知覚の才能があったのだろうか。それとも人間には、自分の肉体的欠陥を自覚した上で、その欠陥に注意しつつ創造活動に励めば、欠陥がない人以上にその欠陥を克服できるという素晴らしい能力があるということだろうか。色、味、においに対して多少の欠陥があっても、くよくよする必要はない、とこの文章の初めにも書いた通りなのである。”
この本の中で一番印象的な文章です。
そんな感じで香りの世界が気になる方にはぜひ読んでみて欲しい1冊です。
これを読みながら僕は、「コーヒーもドレミの音階で『ドはブラジル』とかやったら楽しいんじゃないかなー」と妄想まではしてみましたが、残念ながら音楽の素養はなかったです。
オシャンへの道のりは長い。
今日はこの辺で。