トリしらべぇ。

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vol.58 ヒューゴ・デ・ウァール博士×関口監督トークイベント

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今ならなんと3000円で先生のお話が聴けるんですってよ、奥さま

こんにちは。

 

今日、「毎日がアルツハイマー2」と「ザ・ファイナル」に登場したイギリスのハマートンコート認知症ケア・アカデミーの施設長、ヒューゴ先生のトークイベントに参加してきました@日比谷図書館文化館。

 

ヒューゴ先生は関口監督と終始ユーモアとウイットに富んだ掛け合いをされていて、その話を聞いているだけでも面白かったのですが、今回の話の肝は「パーソン・センタード・ケア」(PCC)です。以下の話は、ヒューゴ先生がトークで語っていたことです。

 

作中でも、例えば認知症の人が不安やいつもと違う様子のとき、先生は「探偵」のように何が原因なのかを探すことだと言っていました。この「探偵」のように、というのがミソで、認知症の人に対する正解は常に存在しない、というか不確実性を受け入れるということの手掛かりになっています。中々、普通の日本の介護現場だとヘタすると「そんな暇ねーよ」で終わらされそうな部分ですが、本来はとても大事です。

 

そもそも、認知症というのは、ただの「ラベル」にしか過ぎません。つまりその人の人格そのものは変わらないわけです。

 

今日の解決が、そのまま明日も通じるわけではない、仕事として普段接している我々でさえ、うっかりすると忘れがちですが、認知症そのものの症状が、明に暗に絶えず変化しているからです。

 

相手が言ったことが事実と異なっても否定せずに流れに乗ることもあれば、それは違うと指摘する場合もあります、でも、それらはタイミングや情報のアンテナを常に張り巡らせながら判断するからこそできることでもあるわけです、適当にやっているわけではない。

 

そして、それでも読み切れないことだってある、そういったときに「間違いを恐れない」ことも大事だとヒューゴ先生は言っていました。

 

キーになる概念がいくつか出てきたのですが、中でも「personhood」「connectedness」の二つは、重要なものです。やはり人間性とその繋がりがケアにおいては中心を担っていて、ある種の「魂の共鳴」と言っても良いような関係性があるからこそ、感情の共有のされ得るのだということを強く認識しました。

「魂」などというのは、これまた何とオカルティックで非科学的な言い方だと思うでしょうが、そういう「心に触れる何か」があるからこそ、その人を理解するための入口を我々が見つけることができるわけで、あながち見当違いなことを言っているわけでもないと思います。

 

さて、1時間のトークが終わって、30分の質疑応答がありました。すんごいたくさん聴きたかったけど一個だけって言われました。

 

質問「イギリスでは障害者福祉政策の予算が大幅にカットされているということがありましたが、そんな中、老人介護はどうなんでしょうか?特に先生のハマートンコートはそんな中どのように運営されているのか?」

 

A:「重要な質問ですね。NHS(国民保険サービス)の予算は下がっている、というより、伸びていない=足りないという状態が続いている。ケアに対する予算は下がっており、ケアの予算は地方自治体が決める。その中でhospitalとしてのハマートンコートはNHSからまだ予算が降りやすい状況ではある。ケアに対する予算が下がっていることの大きな要因は、イギリスはケアとヘルスを分けてしまった歴史があり、これは一つの大きな失敗だったと考えられており、見直されている。しかし、これが改善されるには10年くらいかかるだろう。我々のような施設は、予算が必要だといろんなところに絶えず働きかかけることが大事」

 

補足:ハマートンコートは「終の住処」などではなく、認知症の人を、一人一人「パーソン・センタード・ケア」によって、ケアの方針(ケア・マッピング)などを決めるために「仮入所」させる施設としての役割を担っている。イギリス政府とのトラスト(信託)の共同経営とのこと。

 

とまぁ、かなり包括的に歴史関係も含めてお答いただけました。ハマートンコートは施設の性格上、一般的な福祉施設よりもかなり先進的なことをやっており、どちらかというとハイエンドだと思います。そうなると比較的大きなところから予算も出ているのではないかな、ということは予想できたので、その辺の位置づけも含めての質問、ということでした。施設としてもホスピタルであるわけで、その辺の区分けも予算がどこから出ているのかというところに、大きな違いを与えているのでしょう。

 

それにしても…ハマートンコート、超行ってみてぇー(笑)

トレーニング受けるのいくらかかるとか、調べてみます。

 

今日はこの辺で。