トリしらべぇ。

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vol.40 森さんのコーヒー

こんにちは。

 

いろんなコーヒーを飲んできていろんな豆やいろんな淹れ方を知ったんですが、僕にとって基準になっているのは、やっぱり一番初めに飲んだコーヒーなんです。

 

で、僕が大学生のときに良く通っていたカフェがあって、その時にはじめて「焙煎屋さんのコーヒー」を飲んだことが興味の大きなきっかけになっています。

 

といってもそのカフェでは、それまでUCCのコマーシャルコーヒーを使っていたんですが、そこにアルバイトとして入ってきたのが森さんでした。

 

森さんはコーヒーが好きで、コーヒーに関する知識や技術を働きながらいろんなお店の料理とともに吸収していったようで、最初はランチ営業のみコーヒー重視の「喫茶店」として森さん一人で営業をはじめたんです。

 

そしてその時に飲んだコーヒーに大きく影響を受けて今の僕がいます。

 

ちなみにもっとさかのぼると中学生のときに個人塾の先生が淹れてくれたコーヒーが初ドリップコーヒーになります。当時はスターバックスが出来て間もない時で、どうやら先生もそこから豆を買ってきて、気が向いたら生徒に飲ませる、みたいなちょっとアレなことをする先生でした(笑)

 

話を戻します。

 

で、森さんのコーヒーを飲んで驚くんです。「こんなの飲んだことない!」って。

 

ブレンドなんですけど、本当に風が吹いたみたいにサァーっと口のなかでいろんな味がして、そんなに苦くもないし、ほんとうにおいしかったんです。

 

で、しつこく通っているうちに、どうやったらこれを作れるようになるんだろう?という興味が湧いて、そのうち森さんが店長をすることになって、空いたバイト枠に僕がスタッフの一人として入りました。

 

当時、和食ダイニングのキッチンスタッフもやっていたのでほとんど休みなしで働いていて、それ自体は苦ではなかったんですが、もともと要領の良いほうではないにも関わらずそんな無茶をしたもんだから、結果体調を崩したり、他にもあんまし要領が悪かったものだから結局いろんな人に迷惑かけたりしてました。

 

で、結局僕は在籍した一年の間でお客さんにコーヒーを出しても良いよ、とはならなかったんです。技術を習得することに熱中し過ぎて周りが良く見えていなかったなと本当に恥ずかしい限りです。

 

でも、森さんの技術的な部分の強みは年月が経っていろんな物事を知っていくうちによりはっきりと分かるようになりました。

 

ハンドドリップというのはお湯を注ぐだけの誰にでもできるシンプルな仕組みですが、実際はお湯の抜け具合や粉の粗さ、注ぎ方で味の印象がとても変わりやすいという特性があります。

 

こうした部分が自分でコーヒーを淹れるという楽しみにもつながる半面、「一定の味の印象」を維持するのが難しいと言われている理由の一つです。

で、森さんがすごかったのが、そこにブレがほとんどないということと、今まで見てきたハンドドリップの中でも群を抜いて「速い」ということでした。

 

はっきりとした理由は分かりませんが、これは森さんがファストオーダーのコーヒー屋さんで仕事をした経験があるからなのかもしれません。時間的な早さというのは仕事をする上ですごい強いことだと僕は思います。

 

もっとも、コーヒーに限らず、全ての業務がとてつもなく早かったですが。

 

当時焦っていた僕はそこに「並ばなければならない」みたいな変な緊張感で一杯で、家に帰っても全然休めなくて、逆に何一つままならないままでしたが、今考えると、それだけ開きがあるのなら潔く地道にやって自分なりのやり方を確立してれば良かったんだなぁと思います。

 

でも、その経験がきっかけで鬼のようにコーヒーを飲んだり淹れたりして、結果細かい味の違いが分かるようになったので、無駄にならなくて良かったです。

 

しかもコーヒーを淹れている時の動作、森さんはめちゃくちゃ綺麗です。

「何でそんな高さからお湯を注いでコントロールできるの?」ていうくらい自在に操ってました(笑)

 

たぶんですけど、「今・ここ」に対する意識が恐ろしく高かったからだと思います。

迷いが一切ない動きでしたから。

 

本人は「森さんの」と固有名詞が付いてしまうのが嫌だと言っていましたけれど、どれだけ隠してもにじみ出るのが個性や良さというものではないでしょうか。

 

ちょっと長くなりましたけれど、たまに思い出して飲みたくなる森さんのコーヒーの話でした。

 

森さんのコーヒーの味は今でも鮮明に覚えていて、それが僕のコーヒーの目標です。

 

今日はこの辺で。